この記事は比較的長文になるので、まずは結論を述べておこうと思います。
それは、「優秀な人財と会社に思われている人が率先して育休を取る、もしくは企業が敢えて取らせる」という制度を積極導入すべきという点です。
それにより、育休取得が逆に「キャリア」となり、人材マネージメントの一環としての「管理職研修」を兼ねるものとなる。
「育休」を「キャリア」とする事で男性育休取得率の向上が図れるのでは?という・・
ま、個人の主張でございます(^ワ^)
私は2019年の6月から8月まで育児休業を取得しました。
第二子出産時に体が動かない妻のサポートの一環で取得しています。
たった2ヵ月?と思われるかもしれませんが、私の会社では当時、男性が育児休業を取るという文化はありませんでした。
そんな中、管理職であった私は仕事と家庭を天秤にかけた結果、「家庭」を選びました。管理職で男性で育児休暇を取るのは、会社としても異例のことだったのです。
取る時には勝算はありました。代替えのできないポジションであったので、会社としても手放したくない人財であったのだろうと考えます。比較的交渉も上手くいき、在宅でも状況によってメールなどで対応したりweb会議を行うという事で手を打って頂きました。
キャリアはどうなるか・・ですが、
その取った後の顛末は、過去記事にまとめておりますので、お時間があるときにでも、ご一読いただけたなら幸いです。
話を社会全体の構図に高めてみます。
男性も女性もジェンダーフリーで働ける社会作りは確実に進んでおり、企業では当たり前に女性の管理職も登場し、男女ともにコラボレーションして社会を作り上げています。
女性は「出産」というライフイベントがあり、その前後でのキャリア構築を一旦お休みして育児に専念します。個人差はありますが、産休と育休を踏まえてキャリア復帰をしていくのが一般的な流れかと思います。
その時期に男性は十分なサポートができているか・・?
その結果が下記のとおりです。
「平成30年度雇用均等基本調査(速報版)」厚生労働省ホームページより
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05049.html
ある程度は国も男性の育児休業を推進してきたのでしょう。
ただ結果的に10%にも満たない水準。
本来ならば、政府の試算では、2017年までに10%、2020年までに13%と目標となっていました。その目標には全く届いていないのがこの現状。
なぜ、男性は育児休業を取得しないのか?
それにはいろいろな理由があると考えられます。
「2017年度労働者調査」によると、男性が育児休業を取得しない理由トップ3は、
「職場の人手不足(39%)」
「職場の取得しづらい雰囲気(34%)」
「自分にしかできない仕事また担当している仕事がある(22%)」
という理由が挙がっています。
実際にうちの会社で聞き取りを行った際に出た内容では、
- 妻との話し合いで、お金を稼ぐために働いてほしいと言われた
- 取るのが後ろめたい。自分の業務を任せるのが辛い
- そもそも育休を取るというイメージもない
- 休み中に評価があいまいになりキャリア阻害にならないか心配
という理由も上がりました。
大規模なアンケート調査としては、下記のものがあります
確かに各々の家庭でのライフイベントに応じた話し合いの結果考えられたものであるのならば男性育休は取得せずにそのまま継続業務というのも一つの考えでしょう。
また専門性のある業務やプロジェクトに参画しており手が離せないという事も往々としてある事です。その時にもタイミング的には取りにくいでしょう。
ただし、実は・・企業側もパパ側もこのタイミングが一つのチャンスかと思われます。
なぜならば、いくつかの有利な条件が現実味を帯びてきたからです。
それを順を追ってご紹介していきますね(^ワ^)
- ①国が名目上、取得率を上げに来る方針(国家公務員取得義務化)
- ②2020年4月の育児休業給付金が実質給料100%となる見込み
- ③働き方改革推進企業が増えてきている
- ④男性育休推進にによる企業助成金
- ④男性育休取得をキャリア化
- ⑤育休取得後のキャリアを会社&上長と握る
①国が名目上、取得率を上げに来る方針(国家公務員取得義務化)
②2020年4月の育児休業給付金が実質給料100%となる見込み
現状、給料の67%の育児休業給付金が支給されていました。社会保険控除も加わり、実質は給料の80%程として支給されていたことになりますが、2020年3月までにまとまるものとして、67%から80%に引き上げることにより、実質100%の給料を手に入れることができる制度となります。となれば、給料が下がるから育休が取れないと考えていた世帯にとっては大きな朗報になるかもしれません。
※ただし財源次第なのでまだ確定的な話はできませんが・・
③働き方改革推進企業が増えてきている
今回の「働き方改革」の波はある意味本物です。
国が介入している事から意地になっている企業もあります。
しかし、根本としては、優秀な人材に残ってもらいたいからこそ、福利厚生の一環で男性の育児休業を推進している企業が増えてきたという所でしょう。
となれば国からも企業側に対しての助成や優遇措置を図ってくる可能性が今後、より一層高くなってくる可能性もあります。
実際に男性の育児休業に対して、理解のある企業の一覧も出ています。
ひょっとすると、アレ?ウチの企業もあったのか?という方もおられるのでは(笑)
④男性育休推進にによる企業助成金
国の管轄では、厚労省から助成金が企業に出るようになっています。
この制度はもう企業側の人事担当の方も周知かとは思います。
●両立支援等助成金(出産時両立支援コース)
男性社員が育休を連続して
中小企業なら5日以上、中小企業以外は14日以上取得した場合に、
1人あたり中小企業で57万円、中小企業以外で28.5万円出る助成金です。
ただ子供の生後8週間以内に育休を開始する必要性がありますし、
別途、この際の導入のための研修を企業がウケておくことが必須です。
2人目以降は、休業取得日数に応じて支給額が変わります。
【中小企業の場合】
●育休5日以上~14日未満であれば14.25万円支給
●育休14日以上~1ヵ月未満であれば23.75万円支給
●育休1ヵ月以上であれば33.25万円
【大企業の場合】
●育休14日以上~1ヵ月未満であれば14.25万円
●育休1ヵ月以上~2ヵ月未満だと23.75万円
●育休2ヵ月以上~で33.25万円
と長期にわたり育休を取得する程助成金が出る仕組みとなっています。
ただし1企業につき1年で10人までが限度となっています。
さらに人手が足りない中小企業で手厚くするシステムとして下記の助成を設けています。
●両立支援等助成金(育児休業等支援コース)
育児休業取得時から職場復帰後や、代替要員においても助成が支給されるもの。
ただしその企業が「育休復帰支援プラン」を作成していることが条件です。
助成は育休取得時と職場復帰時共に28.5万円となります。対象者は少なくとも3カ月以上育休を取得するという条件が必要となります。
つまり一人当たり57万円支給されるという事になります。
ただし、1事業主に対して無期労働者1人、有期労働者1人の合計2人までとなります。また、人手が足りない際は代替要員の費用も補填してくれます。中小企業が、育児休業取得者の代替要員を確保し、取得者を現職等に復帰させた場合に助成金を受け取ることができます。支給額は一人当たり47.5万円となり、期間限定の契約社員の場合9.5万円が加算されるというものです。この助成金は、1事業主に対して1年度10人までです。
このように、企業側にデメリットを生じさせにくいようにしてくれているわけです。
何もないよりかは非常に良い。
特に人手が足りない中小企業に優遇を厚めに取っているところが特色です。
④男性育休取得をキャリア化
これが私にとっての本論となります。
最近、キャリアをどうするか?という系の話がありますが、本来ならば自分のキャリアは自分で決めるものでもあります。棚からぼた餅・・、いえ、時の流れ・・というのもあるのかもしれませんが、そういう年功序列はもう破綻しているとも言えます。
これからの人材マネジメント(people manargement)に求められるのは社員の仕事と家庭の両立「work life balance」をいかに考えられるかです。
つまり管理職になるためにも、率先してこの育休というライフイベントを体感しておく事は今後の自分自身のマネジメントスキルやモラル・キャリアハラスメント予防にも大きく役立ちます。
自分の部下が育休を取得する時にもこの経験は役に立ちますし、部下もこの上長なら・・と安心して業務に携われるかもしれません。さらにいえば部下のキャリアをトータルで考えることが出来る人材育成論も養われます。
⑤育休取得後のキャリアを会社&上長と握る
これが最も重要かもしれません。真に有能な人材であった場合は会社も留めておきたいと思うはずです。ただし、謙虚な態度でいなければ、心証を悪化させるどころか、
「あいつは仕事はできるが、組織には向いていない」とか、
「仕事はできたとしても連携が取りにくく扱いにくい」などと
思われてしまっては復帰どころか、別部署に異動という状況に陥ります。
長期育休を取得される方の状況として、
- その部署に長く勤めているケースが多い(そろそろ転勤の時期)
- 長期不在になると業務が滞る
- 復帰後のplanを個人も会社も明確化していない
という事が考えられます。
したがって、事前にどれだけの期間を取得し、復帰後は同じポジションで勤務したい。
短期的ではなく、長期的な視野を持って、その段取りとしての育休であることをアピールする事が重要かと思います。
さらには復帰するまでの間の
- 予定(子供を保育園に行かせる、落ちた場合はどうするか?など)
-
会社への復職方法(育休中、育休後の勤務体系)
などを会社と協議しておくことが重要です。
また、育休取得中にも上長には近況報告と、育休中にも仕事の点でこういう点を勉強しているとか、復帰後にはこういうプランを考えているという事を綿密に伝えておく事。
そうする事でだいぶ企業側の心証や、育休後のキャッチアップも変わるかと思います。
育休は権利ですが、権利に胡坐をかいて取得する。という姿勢では万人の反感を買います。なのでこの点も視野に入れて、どういう風に男の人も育休を戦略的にとるか?が有能さの一つの目安になるのかもしれません。(もしかして会社に試されてる?)
もしパパでpeople manegement(管理職)を目指しておられるのであれば、逆にこの育休を通して得たものを会社に還元すると大きな評価にもつながるかもしれませんよ。
以上のように、
①パパが育休を取る事に対して社会的機運も高まっている
②報酬面も働いている時とほぼ変わりが無い
③会社との事前相談で今後の管理職の道も拓ける
④企業側も受け入れやすくなりつつある
という非常に良いタイミングであるという事になりますね(^ワ^)
最後に申しあげておきたい事は、是非、このような出世の機会にもつながりやすくなってきている男性の育休取得。是非、会社から期待されている優秀な人材から志願して取得してもらいたいです。
なぜなら、
①自分不在でも仕事を回せるようにするスキル
②周りと調整しながら業務を遂行するスキル
③育休を通して人事の在り方を分析、今後の部下のライフイベントを考えられるスキル
④周りから反感を買わないようにうまく対応する折衝スキル
⑤自分の長期キャリアをアピールできるスキル
⑥今後のキャリアに邁進するために、妻にサポーターになってもらえる
⑦部下育成と子供育成は似ている。疑似体験による育成スキル
などが飛躍的に向上する可能性があるからです。
是非、会社の中枢を担う方から育休を取っていってもらいたい。
そして人を育てる事やヒトの理解を得ることがどれだけ重要かを識ってから・・
偉大な管理職や影響者になっていってもらいたいものです。
(敢えて言うなら、企業が優秀な人材に研修の一環で育休を取らせるのであれば・・、すごい将来性のある会社なのだろうな・・と感じてしまいます)
ただ、育児休業を取得してママのサポートをしているパパが多い現状で、「取るだけ育休」とかいう言葉が一部出ているという話題もあります。
これはある団体がとったアンケート結果から出てきているものですが、
3/4のママがパパの育児休暇が有り難いと言っている反面。1/4が取っただけで何もしないという事をクローズアップしたもので、この25%の方だけを問題点として取り上げた結果生まれてきた言葉です。残りの3/4のママの感謝は全く語られないという・・。
こういう事のみクローズアップすると、男性育児休業したくない男性陣としては、
「ほーらね?取っても役に立たないのだから、育児は慣れたママがやればいいのさ」
という発想にもつながります。
となれば全く所得率は上がらないでしょう。
もうちょっと考えてデータの出し方を評価してもらいたいものです。
実際に2ヵ月という短期間ですが育児休暇を取った私としては、
今まで以上に妻の苦労が分かり、子供たちのケアの重要性を学びました。
おそらく育休を取り、家事育児に直接携わった人しかわからない「境地」だと思います。この経験は、どのような職種であれビジネスに何らかの形で活かせそうな気もします(笑)
企業側も、人財戦略の一環で、長期に優秀な社員を抱えたいのであれば、今一度真剣に考えていくジャンルではないかと思います。
コロナウィルスによる問題でもそうですが、在宅勤務やリモートワークをうまく活用し、自由な働き方を模索していく事も企業戦略の一つかと考えます。
これからの日本を背負う次世代にしてあげることがあるとするならば、父親と母親の愛情を最初に与えてあげる事、そして家族のパートナーとして皆で戦っていく事。
子供はパパの仲間。仲間の成長をぜひ身近で見届けてあげてくださいね。