コロナウィルスによって引き起こされるウィルス感染の治療として喘息薬として本邦でも使われているシクレソニド吸入薬(オルベスコ)が有用な可能性が示唆されている
このシクレソニドが今回のコロナウィルス感染(COVID-19)に対して有効かもしれないという報告は、国立感染症研究所村山庁舎のコロナウイルス研究室からの情報提供があってのこそらしい。
このCOVID-19が肺炎を起こす機序としては、外部から入ったウイルスが肺胞上皮細胞で増殖する事によって生じる肺障害だけではなく、このウイルスは肺胞マクロファージにも感染し局所での炎症を引き起こす事によって組織障害を引き起こす事が知られている。
なぜこのシクレソニドが有効だったのかというと、この製剤の持つ抗ウイルス作用と抗炎症作用が急性症状となって引き起こされる肺障害の治療に有効ではないか?という可能性があるとの事だ。実際にダイヤモンド・プリンセス号に乗船しており感染していた症例に対してシクレソニドを使用する事により症状軽快が見られたとの事だ。
一方でシクレソニド以外の吸入ステロイド薬では抗ウイルス作用はみられていないという・・。
このシクレソニドは現時点でも未熟児・新生児から高齢者まで幅広く使われている薬剤でもあるので安全性は担保されている。もともとはCOPDなどの気道の慢性炎症の抑制効果が期待されているものであった。
ここからは私見になるが、
本来ならば、COVID-19などのウイルス感染時には糖質コルチコイドなどのステロイド治療は免疫系を抑制するため使用は控えるはずではあるが、免疫系を抑えるというよりは抗ウイルス作用が功を奏しているのかもしれない。
しかも、この治療は重症化する前の乾癬早期から中期くらいまでのフォローアップが目的になるので、比較的早期に感染疑いの症例に検討するべきなのだろうが・・。
軽症例には検査を推奨しない日本の検査体制では後手に回る可能性もあるかも?と思ってしまう。
機序的には、抗炎症作用により呼吸器系の炎症を改善する事により主症状を警戒させるのかと思っていたが、ここまでダイレクトな抗ウイルス作用があるとは知らなかった。
話を報告ベースに戻したいと思う。
また効果面に関しては、まだ分からない事も多い。
実際に使用したという報告では、6例の肺炎患者中、シクレソニド導入前の3例中2例は人工呼吸器管理を要しており、導入後の3例は軽快はしているようだが、疾患背景が各々で異なっているため、今回の症例数だけでは確定的なことは言えないとされている。(下記は実際に治療に当たった病院からの症例報告)
http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_casereport_200302_02.pdf
この報告での考察に、シクレソニドはin vitro(実験的な試験管内での反応)では抗HIV治療薬の「ロピナビル」と同等かそれ以上のウイルス増殖抑制効果を示しているようだ。またこのシクレソニドはプロドラック型であり肺胞への移行が非常に高いのが特徴的でもある。
COVID-19で問題となるのは主に基礎疾患を持っている高齢者という事になっている。
この治療はこのケースレポートにあるような虚弱体質の患者さんでも安全に投与されており、コストも比較的簡便であることから「効果が確立されれば」非常に有用なオプションになるのかもしれない。続報に期待したいところでもある。
助成金が細っている中、感染症におけるシクレソニドの可能性を模索した医療従事者に敬意を払いたい。